プロセスマイニングとは?初心者向けに図解で学ぶ業務改善の第一歩
働き方改革や生産性向上のカギとなる業務プロセスの可視化。RPA導入前などに活用される「プロセスマイニング」の概念を、専門用語を極力使わず図解でわかりやすく解説します。タスクマイニングとの違いや、初めて取り組む企業が知っておくべき基本を押さえます。

業務プロセスの無駄を省き生産性を高めるには、担当者の感覚に頼らない客観的な現状把握が不可欠です。システム上のデータに基づいて業務の流れを可視化する「プロセスマイニング」を活用すれば、真のボトルネックを正確に特定し、改善策を立案できます。本記事では、プロセスマイニングの仕組みやタスクマイニングとの違いについて、具体的な業務例を交えながら初心者にもわかりやすく図解で解説します。
プロセスマイニングとは?基本概念と仕組み
プロセスマイニングとは、企業内のITシステム(ERPやCRMなど)に蓄積されたイベントログデータを抽出し、実際の業務プロセスを客観的に可視化・分析する手法です。担当者の記憶やヒアリングに頼る従来の業務調査とは異なり、システム上の足跡(ログ)という事実ベースで業務の流れを把握します。
プロセスマイニングについてわかりやすく表現するなら、企業における 業務のレントゲン撮影 です。見えない業務のボトルネックや逸脱を、データという確たる証拠によって浮き彫りにします。
たとえば、社員の「経費精算プロセス」を想像してください。本来なら「申請→上司の承認→経理の確認→振り込み」という一直線の流れになるはずです。しかし実際には、「入力ミスによる差し戻し」や「特定の上司での承認滞留」が起きています。プロセスマイニングは、システムに残された操作データをつなぎ合わせ、こうした「見えない無駄」を自動的に図式化します。

プロセスマイニングの仕組みは、システムから「タイムスタンプ(いつ)」「ケースID(どの案件か)」「アクティビティ(どんな作業か)」という3つの必須データを取得することから始まります。これらを時系列でつなぎ合わせることで、誰が、いつ、どのような順番で処理を行ったのかが可視化され、手戻り箇所が一目でわかるようになります。
プロセスマイニングとタスクマイニングの違い
プロセスマイニングとは何かを深く理解するためには、類似する概念である「タスクマイニング」との違いを正確に把握することが重要です。この2つは、分析の対象や目的が大きく異なります。

プロセスマイニングが基幹システムなどのイベントログから「部門をまたぐ業務プロセス全体」を可視化するのに対し、タスクマイニングは従業員のPC操作ログから「個人の詳細な作業手順」を可視化します。両者の違いを以下の表に整理します。
| 比較項目 | プロセスマイニング | タスクマイニング |
|---|---|---|
| 分析対象 | 部門横断的な業務プロセス全体 | 個人のPC上での詳細な作業手順 |
| データソース | ERPやCRMなどのシステムイベントログ | PCの操作ログ(キーボード、マウス操作など) |
| 主な目的 | ボトルネックの特定、全体最適化 | 個人の作業効率化、RPA導入箇所の特定 |
受注から納品までのリードタイム短縮や、部門間の連携不足による手戻りを解消したい場合は、プロセス全体を俯瞰できるプロセスマイニングが適しています。一方、特定の担当者のみが抱える暗黙知の可視化や、データ入力作業をRPAで自動化したい場合は、タスクマイニングが有効です。
プロセスマイニングの導入効果と具体例
プロセスマイニングを導入することで、企業は具体的にどのような成果を得られるのでしょうか。客観的なデータに基づく業務改善は、従来のヒアリングベースの改善とは比較にならないほどの効果をもたらします。
たとえば、ある大手製造業では、調達から支払いまでのプロセスにプロセスマイニングを適用しました。その結果、全体の約30%の案件で不要な承認の差し戻しや重複入力が発生していることが判明しました。このボトルネックを解消するルール変更と自動化を行ったことで、調達のリードタイムを平均で40%短縮し、年間数万時間分の作業工数を削減することに成功しています。
また、より身近な例としてカスタマーサポートの問い合わせ対応プロセスがあります。プロセスマイニングによって「特定の種類のクレーム対応で、部署間のたらい回しが発生し、対応時間が通常の3倍かかっている」という事実がデータで特定されました。窓口のフローを見直すことで、対応完了までの日数を約25%短縮しています。
このように、プロセスマイニングとは単なる現状把握にとどまらず、具体的な数値改善とコスト削減に直結する強力なアプローチです。
導入すべき対象業務の選び方
プロセスマイニングを自社へ導入する段階へ進む際には、適用すべき業務の選定が最初の判断ポイントとなります。

最も重要な前提条件は、 システム上にイベントログが存在していること です。ERPやCRMなど、業務の実行記録がタイムスタンプ付きで保存されている業務が対象となります。
また、プロセスが複雑化・属人化しており、ボトルネックの特定が難しい業務ほど、可視化による改善効果が高まります。単純な定型作業よりも、複数の部門をまたぐ申請フローや、例外処理が多発している調達・購買業務、顧客サポート業務などを優先的に選定することが推奨されます。
現場で運用する際の注意点と成功の秘訣
ツールを導入して分析を開始する際、現場の運用体制とマインドセットがプロジェクトの成否を分けます。以下の注意点と成功の秘訣を押さえておくことが不可欠です。
監視ツールではないことの周知
現場の担当者から「行動を監視されているのではないか」という反発を招くケースが少なくありません。そのため、導入の目的は個人の評価や監視ではなく、 業務のボトルネックを解消し、現場の負担を軽減すること であると事前に周知し、合意形成を図ることが最も重要です。
データクレンジングの徹底
収集したデータ品質にも注意が必要です。システムに蓄積されたログデータに欠損や表記揺れがある場合、正確なプロセスモデルを描画できません。分析前のデータクレンジング(前処理)に十分な工数を確保することが、精度の高い業務改善につながります。
継続的なモニタリングと戦略との連動
一度の分析で終わらせず、改善施策の実行後に再びデータを取得して効果測定を行うサイクルを構築してください。また、可視化されたプロセスを自社のビジネス目標と連動させる視点も重要です。IT戦略マップの作り方と実践的フレームワークや、デジタル化とは簡単に言うと?DX化との違いやデメリット・推進手順を完全ガイドを参考に、現場の改善活動を全社のDX戦略に結びつける仕組み作りが求められます。
まとめ
プロセスマイニングとは、ITシステムに蓄積されたイベントログを分析し、実際の業務プロセスを客観的に可視化・最適化する強力な手法です。本記事では、その基本概念からタスクマイニングとの違い、具体的な導入効果までを解説しました。
プロセスマイニングの導入は、データに基づき業務のボトルネックや非効率性を特定し、属人化を排除した改善を可能にします。製造業や金融業での成功事例が示すように、リードタイムの大幅な短縮やコスト削減といった明確なビジネス成果をもたらします。
導入を成功させるためには、対象業務に十分なシステムログがあるかを見極めること、そして現場を監視するツールではなく、業務負荷軽減のための取り組みであることを丁寧に説明することが重要です。データドリブンな意思決定を促し、組織全体の生産性向上とDX推進を加速させるため、プロセスマイニングの活用をぜひご検討ください。


鈴木 雄大
大手SIerおよびコンサルティングファームを経て独立し、現在は企業のデジタルトランスフォーメーション推進を支援する専門家。これまでに数十社以上の基幹システム刷新や新規デジタル事業の立ち上げを主導してきた。DXナビでは、現場で培った実践的なノウハウと最新のテクノロジートレンドを分かりやすく解説する。真のビジネス変革を目指すリーダーに向けた情報発信に注力している。
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