セキュリティ・リスク管理
鈴木 雄大鈴木 雄大

失敗しないゼロトラスト製品の選び方|SASEとの違いと導入手順

ゼロトラスト製品の導入や比較検討を行っている企業担当者へ。Zscalerなど代表的なツールの機能比較や、SASE(Secure Access Service Edge)との違い、自社に最適な製品を選ぶための基準を解説します。

失敗しないゼロトラスト製品の選び方|SASEとの違いと導入手順
ゼロトラストSASEセキュリティ対策製品比較DX推進リスクマネジメント

リモートワークの普及やクラウド利用の拡大により、従来のネットワーク境界を防御するだけのセキュリティでは情報漏洩を防ぎきれなくなっています。ゼロトラスト製品の導入で失敗しない最大の鍵は、機能の比較前に「自社が守るべきデータと既存のネットワーク環境」を正確に把握し、それに合ったツールを選ぶことです。

本記事では、ゼロトラストの基本概念からSASEとの違い、Zscalerなど代表的な製品の機能比較、そして具体的な導入手順までを解説します。

ゼロトラストとSASEの根本的な違い

ゼロトラストとSASEの根本的な違い

企業がゼロトラスト製品を選定する際、まず理解すべきポイントは、ゼロトラストという概念そのものの本質です。多くの企業がツールを導入すれば直ちにセキュリティが担保されると誤解しています。根本的な考え方を整理することが導入成功の鍵となります。

ゼロトラストは、社内外からのアクセスの全てを信用しないことを前提としたセキュリティ対策の「考え方」や「ポリシー」です。一方でSASE(Secure Access Service Edge)は、社内外から安全にクラウドサービスにアクセスできるよう「ネットワーク機能」と「セキュリティ機能」をまとめて提供する「フレームワーク」を指します(出典: Google Cloud Blog)。

つまり、ゼロトラストという大きなポリシーを実現するための具体的な枠組みの一つがSASEです。ゼロトラストとSASEの違いを正しく認識することで、自社が導入すべき機能の範囲が明確になります。単一のエンドポイント保護を求めているのか、それともSASEのような包括的なネットワークとセキュリティの統合を求めているのかを見極めることが重要です。

ゼロトラスト製品の主要機能と選定基準

ゼロトラスト製品の主要機能と選定基準

判断ポイントを具体化するには、各ソリューションが提供する主要機能を把握し、自社の要件と照らし合わせることが不可欠です。アイデンティティ管理(IAM)やエンドポイントセキュリティ(EDR)など、どの領域に強みを持つ製品なのかを見極める必要があります。

以下は、一般的な機能カテゴリに基づくゼロトラスト製品の機能比較表です。複数のソリューションを組み合わせる場合、既存システムとの連携性も重要な評価基準となります。

機能カテゴリ主な役割と特徴ゼロトラストにおける重要性
IAM(ID・アクセス管理)ユーザーの本人確認とアクセス権限の制御を行う全てのアクセスの起点となる最も重要な基盤
EDR(エンドポイント検知・対応)PCやスマートフォンなど端末側の不審な挙動を検知・防御する侵害を前提とし、被害を最小限に抑えるために必須
SWG(セキュアWebゲートウェイ)外部Webサイトへの安全なアクセスを仲介し、脅威をブロックするリモートワーク時の安全なインターネット接続を担保
CASB(クラウドアクセスセキュリティブローカー)クラウドサービスの利用状況を可視化し、データ漏洩を防ぐシャドーITの防止とクラウド上のデータ保護に寄与
ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)VPNに代わり、アプリケーション単位で安全なアクセスを提供するネットワーク境界に依存しないセキュアな通信を実現

本格的にゼロトラスト製品の比較を行う際は、これらの機能が自社の課題をどう解決するのかを明確にし、ベンダーの提供範囲を確認してください。

主要なゼロトラスト製品の比較

主要なゼロトラスト製品の比較

市場には様々なソリューションが存在しますが、自社の要件に合ったものを選ぶためには、具体的な製品の特徴を理解することが重要です。ここでは、代表的なゼロトラスト製品を比較し、それぞれの強みと選定基準を解説します。

製品名主な特徴と強み適している企業規模・環境
Zscalerクラウドネイティブな設計で、大規模なトラフィックでも遅延を抑える。SWGやZTNAに強み。グローバル展開している大企業、完全なクラウド移行を目指す企業
Palo Alto Networks Prisma SASE次世代ファイアウォールの技術を基盤とし、高度な脅威防御とネットワーク統合(SD-WAN)を単一プラットフォームで提供。セキュリティとネットワークの運用を完全に統合したい企業
NetskopeCASB(クラウドアクセスセキュリティブローカー)領域で高い評価を得ており、クラウドサービス上の詳細なデータ保護と可視化に優れる。複数のクラウドサービス(SaaS)を併用し、利用状況を厳密に管理したい企業
Cisco Secure Access既存のCiscoネットワーク機器との親和性が高く、オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境に強い。既存のオンプレミス環境を活かしつつ、段階的に移行したい企業
Microsoft Entra SuiteMicrosoft 365など既存のMicrosoft環境との統合が容易で、強固なID管理を起点としたアクセス制御に優れる。すでにMicrosoft製品を標準導入しており、追加コストや管理の手間を抑えたい企業

例えば、ゼロトラストの主要製品であるZscalerは、世界中にアクセスポイントを展開しており、リモートワーク環境下でも一貫したポリシーを適用できる点に強みがあります。一方で、Netskopeはクラウド上のデータ保護に特化しており、Microsoft Entraは既存のID基盤を活かしやすいなど、各ベンダーの得意領域は異なります。自社の既存環境(オンプレミスかクラウドか、どのベンダーに依存しているか)と照らし合わせることが成功の鍵です。

現場で運用する際の注意点と導入ステップ

現場で運用する際の注意点と導入ステップ

優れたゼロトラスト製品を導入しても、現場に定着しなければ意味がありません。運用時の最大の注意点は、強固なセキュリティ制御が従業員の業務効率を著しく低下させないようにすることです。導入は以下の3つのステップで段階的に進めることを推奨します。

  1. 現状の可視化と要件定義 :まずは社内の全てのデバイスやアクセス権限、クラウドサービスの利用状況(シャドーIT含む)を洗い出し、保護すべき重要データを特定します。
  2. スモールスタートでの検証 :いきなり全社展開するのではなく、IT部門や特定のプロジェクトチームなど限定的な範囲で導入します。全てのアクセスを厳格に検証する性質上、正規の業務通信まで遮断してしまう過検知が発生しやすいため、この段階で通信ログを分析しポリシーをチューニングします。
  3. 全社展開と継続的な教育 :検証で得た知見をもとに全社へ展開します。新しいセキュリティポリシーを現場に定着させるためには、従業員に対する継続的な教育やリテラシーの向上が不可欠です。組織全体のITリテラシーを底上げする取り組みについては、デジタル化とは?企業メリットと社内定着を促す教育・リスキリング3ステップ も併せてご参照ください。

包括的なゼロトラストセキュリティやSASE環境の構築には初期費用や運用コストがかかります。予算確保の手段として、IT導入補助金などの公的支援制度の活用も視野に入れてください。具体的な申請手順については、【2026年最新】it戦略ナビwithの活用法!IT導入補助金で加点を得る3つの手順 を参考に計画を立てることをおすすめします。

まとめ

本記事では、現代の複雑なセキュリティ課題に対応するためのゼロトラスト製品の選び方について、SASEとの違いや具体的な製品比較、導入手順のポイントを解説しました。

最適な製品を選定し、効果的に運用するためには、以下の点が重要です。

  • ゼロトラストとSASEの概念的な違いを正確に理解する。
  • 自社のビジネス要件や既存環境に合わせた機能要件を明確にする。
  • Zscalerなどの主要製品の特徴を把握し、自社に最適なソリューションを選ぶ。
  • セキュリティ強化と業務利便性のバランスを考慮し、段階的な導入計画を立てる。

これらのポイントを踏まえ、自社に最適な製品を導入することで、DX推進を安全かつ確実に支える強固なデジタル基盤を構築できるでしょう。複雑なセキュリティ環境を乗り越え、ビジネスの成長を加速させるための一助となれば幸いです。

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鈴木 雄大

鈴木 雄大

大手SIerおよびコンサルティングファームを経て独立し、現在は企業のデジタルトランスフォーメーション推進を支援する専門家。これまでに数十社以上の基幹システム刷新や新規デジタル事業の立ち上げを主導してきた。DXナビでは、現場で培った実践的なノウハウと最新のテクノロジートレンドを分かりやすく解説する。真のビジネス変革を目指すリーダーに向けた情報発信に注力している。

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