シャドーITとは?情報漏洩リスクの具体例と企業が取るべき5つの対策
社員が個人の判断で利用するクラウドサービスなどが引き起こす「シャドーIT」のリスクを解説。企業が直面する情報漏洩の脅威や具体例と、情シス部門が取るべき初動対応についてまとめました。

シャドーITによる情報漏洩を防ぐ最大の鍵は、単に利用を禁止するのではなく、現場の業務効率を落とさない代替ツールを迅速に提供することです。企業内で従業員が独自に利用するITツールは、セキュリティインシデントの大きなリスク源ですが、現場の切実なニーズの表れでもあります。本記事では、シャドーITの具体例やリスクを整理し、システム管理者が講じるべき5つの対策を解説します。
シャドーITとは?企業に潜む未把握のツール

シャドーITとは 、企業や情報システム部門が把握・許可していない状態で、従業員や各業務部門が独自に業務利用しているITデバイスやクラウドサービスを指します。
現在、多くの企業でシャドーITが深刻なセキュリティ課題となっています。Productiv.comの調査によると、企業内で利用されるアプリケーションの42%をシャドーITが占めています。平均的な企業では975もの未確認クラウドサービスが使用されているにもかかわらず、IT部門が把握できているのはわずか108サービスに過ぎません(出典: シャドーITとは - Josys)。
シャドーITを判断するポイントは、「会社が公式に管理・許可しているか」という明確な基準にあります。全社的なITリテラシーの向上と環境整備を進める際は、デジタル化とは?企業メリットと社内定着を促す教育・リスキリング3ステップ も参考にしながら、安全と効率を両立する仕組みづくりを進めてください。
よくあるシャドーITの具体例と発生する根本原因

自社で利用されているツールがシャドーITに該当するかどうかは、会社が公式に契約・管理し、セキュリティポリシーの適用範囲内にあるかで判断します。
代表的なシャドーITの具体例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 個人向けチャットアプリの業務利用 :LINEやFacebook Messengerなどの個人のアカウントを使って、社員間や顧客と業務連絡を行うケース。
- 未承認のクラウドストレージの利用 :ファイルの共有やバックアップのために、会社が許可していない個人のGoogle DriveやDropboxなどを使用するケース。
- 無料のファイル転送サービス :大容量のファイルを送るために、セキュリティが不透明な無料のファイル転送サービスを無断で利用するケース。
- 私物のスマートフォンやPC(BYODの未定義利用) :会社で許可・管理されていない個人所有の端末に業務データを保存し、仕事を行うケース。
- 無料の生成AIツールの無断利用 :業務効率化のために、会社が契約・許可していない生成AIツールに、顧客情報や機密データを安易に入力してしまうケース。
シャドーITは、単にルールを破ろうとする悪意から生まれるわけではありません。従業員数1,000名以上の大企業において、約3割(29.6%)が自社で承認されていないITツールの利用を把握しています。未承認ツールが利用される主な原因として、「代替となる社内システムの提供が間に合っていない」(53.3%)や「業務効率の低下を避けたい」(50.0%)が挙げられています(出典: 大企業のシャドーIT実態判明 - JAPANSecuritySummit Update)。現場のスピード感に公式のIT環境が追いついていないことが最大の要因です。
シャドーITのリスクがもたらす情報漏洩の脅威

企業が把握しきれていないクラウドサービスやデバイスの利用は、深刻なセキュリティ事故の引き金となります。
IT部門の管理の目が行き届かない状態は、直接的な情報漏洩へとつながります。世界中の企業の85%が過去2年間にサイバーインシデントを経験しており、そのうち11%はシャドーITの使用に関連していることが明らかになっています(出典: シャドーITとは - Josys)。
IT部門がセキュリティ対策やアクセス権限の管理を行えないツールが業務に組み込まれることで、シャドーITのリスクは日々増大しています。退職者のアカウントが個人利用のまま残ってしまったり、機密データや顧客情報を安易に入力してしまったりすることで、意図せぬ情報漏洩を引き起こす危険性が高まります。
情報漏洩リスクを防ぐ5つの対策

シャドーITによるリスクを最小限に抑えるためには、システム管理者が主導して実効性のある対策を講じる必要があります。ここでは具体的な5つの対策を解説します。
1. 利用実態の可視化とヒアリング
まずは、従業員がどのようなツールをなぜ使いたいのかをヒアリングし、業務の実態を把握します。ネットワーク監視ツールなどを導入し、社内で利用されている未承認のクラウドサービスを洗い出すことが第一歩です。
2. 代替ツールの迅速な提供
現場の業務効率を落とさないよう、セキュリティ基準を満たした代替ツールを迅速に提供します。新たなシステム導入の際は、コスト負担を軽減するために補助金を活用して適切なITツールを整備することも有効です。具体的な活用方法については、【2026年最新】it戦略ナビwithの活用法!IT導入補助金で加点を得る3つの手順 を参考にしてください。
3. 利用申請プロセスの簡素化
安全なクラウドサービスの選定基準を明確にし、利用申請の手続きを簡略化します。従業員が正規のルートでツールを利用しやすい環境を整えることで、隠れて未承認ツールを使う動機を減らします。
4. ガイドラインの策定と教育
シャドーITのリスクについて従業員への教育を徹底し、どのようなツールが許可されているのか、明確なガイドラインを策定します。特に生成AIなどの新しい技術に対する取り扱いルールを周知することが重要です。
5. 柔軟なITガバナンスの構築
単に利用を禁止するだけの対策は逆効果になる可能性があります。一定のルールを設けた上で特定のツールの利用を公式に許可するなど、現場の利便性とセキュリティのバランスを取る柔軟なガバナンスが求められます。
まとめ

シャドーITは、企業にとって情報漏洩やセキュリティインシデントの重大なリスクをはらむ一方で、現場の業務効率化への強いニーズから生まれる現象です。
単に利用を禁止するだけでは根本的な解決にはなりません。現場の利便性とセキュリティのバランスを取りながら、従業員が安全かつ効率的に業務を遂行できるIT環境を整備することが、シャドーIT問題の解決に繋がります。本記事で紹介した5つの対策を実行し、安全なシステム運用を目指してください。


鈴木 雄大
大手SIerおよびコンサルティングファームを経て独立し、現在は企業のデジタルトランスフォーメーション推進を支援する専門家。これまでに数十社以上の基幹システム刷新や新規デジタル事業の立ち上げを主導してきた。DXナビでは、現場で培った実践的なノウハウと最新のテクノロジートレンドを分かりやすく解説する。真のビジネス変革を目指すリーダーに向けた情報発信に注力している。
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